アーユルヴェーダ

秋になると「肌が不安定」になるのはなぜ?|皮膚科学とアーユルヴェーダから考える“ゆらぎ肌”対策

秋になると「急に肌が乾燥する」「化粧品がしみるようになった」「赤みやかゆみが出る」といった経験はありませんか?

日本ではこのような状態を「ゆらぎ肌」と呼びます。医学的な病名ではありませんが、季節の変わり目に多くの人が感じる“肌の不安定さ”をうまく表現した言葉です。

現代の皮膚科学では、秋のゆらぎ肌は「角質層のバリア機能が低下することで一時的に敏感になった状態」として説明されます。

一方で、インドの伝統医学であるアーユルヴェーダでは「秋はヴァータ(風の性質)が乱れる季節」とされ、乾燥や冷え、不安定さが心身に影響を与えると考えられています。

この記事では、

  1. 現代皮膚科学から見た秋のゆらぎ肌の原因
  2. アーユルヴェーダ的な捉え方とケア方法
  3. その両者を組み合わせた“統合的スキンケア”の可能性

について整理してみましょう。

秋のゆらぎ肌を皮膚科学的に理解する

要因 解剖学的・生理学的説明 臨床的影響
湿度低下 角質層の水分保持能が低下し、経皮水分蒸散(TEWL)が増加 乾燥、かゆみ、ひび割れ
気温差 自律神経のバランスが乱れ、血流調整に影響 赤み、血流不安定、敏感症状
紫外線ダメージ残存 夏季のUVによるDNA損傷や免疫低下が持ち越される 慢性的炎症、シミ・色素沈着
バリア機能低下 セラミド欠乏や脂質構造の乱れにより防御能が低下 刺激過敏、炎症反応

バリア機能の低下がカギ

肌の一番外側にある角質層は「レンガとモルタル」に例えられます。

角質細胞(レンガ)をセラミドや脂質(モルタル)がつなぎ合わせ、外界からの刺激を防ぎ、水分を保持しています。

この仕組みが弱まると、肌は乾燥しやすく、赤みやかゆみなどの炎症を起こしやすくなります。

秋特有の環境要因

秋は肌を不安定にする条件がそろっています。

  • 湿度低下:空気が乾燥し、角質の水分保持力が落ちる
  • 寒暖差:朝晩の気温差で自律神経が乱れ、血流や皮脂分泌が不安定に
  • 紫外線ダメージの持ち越し:夏に受けた紫外線の影響が秋まで残り、修復が追いつかない

その結果、乾燥・かゆみ・赤み・一時的な敏感症状が出やすくなるのです。

アーユルヴェーダ的視点:秋は「ヴァータの季節」

観点 ヴァータの特徴 肌への影響 推奨ケア
性質 乾・冷・不安定 乾燥、敏感、肌荒れ 温性・油性の食事(ギー、煮込み料理)
季節的影響 秋に増大しやすい ゆらぎ肌、冷え オイルマッサージ(アビヤンガ)
心身への影響 不安、不眠、緊張 自律神経乱れ、ホルモン不安定 ヨガ・瞑想・規則正しい生活

アーユルヴェーダでは、心身の状態を「ヴァータ(風)・ピッタ(火)・カパ(水)」という3つのドーシャ(生命エネルギー)のバランスで説明します。

秋は特に「ヴァータ」が増えやすい時期。ヴァータの性質は「乾・冷・不安定」で、まさに秋のゆらぎ肌の症状とリンクします。

ヴァータを整えるケアの例

  • 食事:温かく油分を含む料理(ギー、煮込み料理、スパイス)を摂る
  • 外用ケア:アビヤンガ(ごま油やアーモンドオイルでの全身オイルマッサージ)、ナスヤ(鼻腔オイルケア)
  • 生活習慣:規則正しい生活リズム、十分な睡眠、ヨガや瞑想

つまり「温める・潤す・安定させる」がキーワードです。

科学と伝統を組み合わせると?

視点 現代皮膚科学的アプローチ アーユルヴェーダ的アプローチ 統合的提案
原因理解 湿度低下・紫外線ダメージ・自律神経の乱れによるバリア機能低下 ヴァータ(乾・冷・不安定)の増大による乾燥・不安定性 双方が「乾燥・不安定」を共通のリスク要因と認識
ケアの基本 保湿剤(セラミド、ヒアルロン酸)、低刺激スキンケア、睡眠・栄養管理 温性・油性の食事、アビヤンガ(オイルマッサージ)、瞑想・ヨガ 医学的保湿 × アーユルヴェーダ的オイルケアの併用
時間軸 短期的改善(バリア修復・炎症抑制) 長期的安定(体質調整・生活習慣改善) 短期+長期で持続的な肌の安定を目指す
学術的基盤 エビデンスに基づく皮膚科学(Elias, 2005; Proksch et al., 2008) 伝統医学・ドーシャ理論(Jaiswal & Williams, 2017; WHO, 2022) 補完・統合医療の研究領域として発展可能

現代医学とアーユルヴェーダはアプローチは違っても、実は同じ現象を別の言葉で説明しています。

  • 皮膚科学:バリア機能の低下 → 乾燥や炎症
  • アーユルヴェーダ:ヴァータの増大 → 乾燥や不安定

この共通点を生かして、両者のケアを組み合わせると効果的です。

統合的なケアの提案例

  • 保湿剤(セラミド配合など)+オイルマッサージ(アビヤンガ)
  • 睡眠と栄養管理+ヨガ・瞑想
  • 短期的な炎症対策+長期的な体質改善

つまり「エビデンスに基づくケア」と「体質を整える伝統的ケア」をかけ合わせることで、秋のゆらぎ肌に対して“持続可能なスキンケア”が可能になるのです。

まとめ

秋のゆらぎ肌は、

  • 現代皮膚科学では「角質バリアの低下」
  • アーユルヴェーダでは「ヴァータの乱れ」

として説明されます。

異なる体系ながらも、どちらも「乾燥・不安定」が根本にあると捉えています。
だからこそ、両方の視点を組み合わせた統合的なアプローチが有効です。

保湿+オイルケア、栄養管理+ヨガ瞑想。
短期と長期のケアを両立することで、秋の肌はより安定し、美しさを取り戻していくでしょう。

 

 

参考文献